SPDの効果的な使い方
SPDは適切に設置しないと雷サージ防護効果を発揮しません。
ここではSPDの雷サージ防護効果を十分に発揮させるための効果的な使い方をご紹介します。
1.SPDと被保護機器との配線
(1)SPDの配線長
(2)SPDと被保護機器の接地
(3)SPDと被保護機器との距離
(4)SPDと被保護機器とのループ面積
1.SPDと被保護機器との配線
電源系統にSPDを設置する際にはSPDの配線(下図の①②)が極力短くなるように設置して下さい。
①②の配線が長い程、雷サージが侵入した際に被保護機器に加わる電圧が大きくなります。
(SPDの配線長に応じた電圧降下が発生するため)
図1 SPDの配線長による影響
※通信系統の場合は流れる雷サージ電流が比較的小さく、配線長に応じた電圧降下は無視できるレベルであるため、 上記を考慮する必要はありません。
SPDと被保護機器の接地は必ず接続し、共通として下さい(図2bを参照)。
接地を別々とした場合、雷サージを接地へ放流した際に発生する大地電位上昇によりSPDの接地と被保護機器の接地とで電位差が生じます。この電位差によって被保護機器に過大な電流が流れる可能性があります(図2aを参照)。
図2 SPDと被保護機器との接地
SPDと被保護機器との距離が10m以上離れる場合、図3のようにSPDを追加で設置して下さい。
SPDと被保護機器との距離が10m以上離れると振動現象と呼ばれる現象が発生し、SPDの制限電圧を超える過電圧(最大でSPDの制限電圧の2倍)が被保護機器に印加される可能性があります(図4を参照)。
図3 SPDと被保護機器との間の配線長の影響
図4 振動現象の例
※なお、JIS C 5381-12には「一般に振動は、10m未満の場合には無視することができる。」と記載されています。
SPDと被保護機器とのループ面積(図5の黄色範囲)は可能な限り小さくすることが望ましいです(図5bを参照)。
ループ面積が大きいと雷サージによる電磁誘導の影響が大きくなり、被保護機器に過大な電流が流れる可能性があります(図5aを参照)。
図5 SPDと被保護機器との間の配線ループの影響
図5bのように被保護機器への配線と被保護機器の接地線との間隔を狭くすることによって被保護機器へ印加される電圧を低くします。
2.複数の接続点(インターフェイス)を持つ機器の保護
SPDは基本的に被保護機器に接続されるすべての金属線路に設置します。
例えば図6のように電源線、通信線、ネットワーク回線、アンテナ線が接続された機器を保護する場合、線路の種類に応じたSPDを各線路に設置し、各SPDと被保護機器の接地をすべて共通で接続します。
SPDは大きく分けて電源用、通信用、LAN用、同軸用の4種類が存在しますが、電源や回線の種類、コネクタの形状等により更に細かく分かれます。
次の表1で代表例をご紹介しますが、詳細については各SPDの製品ページを参照ください。
図6 複数の接続点を持つ機器のサージ対策
表1 各種用途に応じた当社SPDの代表例
線路の種類 | 主な用途 | 当社のSPD例 |
電源用SPD |
交流電源 | |
直流電源 (太陽光発電設備など) |
||
通信用SPD |
~DC3Aの回線 |
|
低耐圧機器回線 |
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多芯回線 |
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LAN用SPD | PoE対応 | LAN-CAT5e-P+II (R) |
PoE非対応 | LAN-CAT6-IS | |
同軸用SPD | F型コネクタ | F-JP-1W |
N型コネクタ | N-JP-6G |
3.高所に設置される被保護機器の保護
高所に設置される被保護機器(監視カメラ等)を保護する場合、「SPD」および「SPDと被保護機器の共通接地」を可能な限り被保護機器に近い位置に設置します。
メンテナンス性などを考慮してSPDや共通接地を被保護機器から離れた低い位置に設けた場合、落雷による電磁界の影響(前述した「配線長による電圧降下」、「振動現象」、「ループ面積による電磁誘導」など)を受けて被保護機器を保護できなくなる可能性があります。
図7 高所に設置される被保護機器のサージ対策
4.異なる建物内にある被保護機器の保護
異なる建物内に設置される機器を保護する場合は、必ず全ての建物内にSPDを設置してください。
一方の建物内にSPDを設置しただけでは、他方の建物内にある機器を保護することはできません。
図8 異なる建物間でのサージ対策