通信機器の雷対策

通信機器が異常電圧により破損するのは、本来絶縁されている部分が異常電圧により絶縁破壊し、そこに過電流が流れるためです。 通信線は一般に2線一対で使用され、この2線間では大地、雷雲、送電線等に対し幾何学的に同一配置状態となっているので、雷、送電線等からの異常電圧は2線に同相で、同一電圧が加わります。この電圧が通信機器の耐電圧以上となると、最も耐電圧の低い部分に絶縁破壊が生じ、その部分に異常電圧による過電流または電源、給電電圧による過電流(例えば半導体素子の逆方向に対してはごくわずかの電流でも過電流となる)が流れ、その通路となった部分が破損します。1線と接地間の絶縁破壊が起こると、瞬時に線間電圧も発生し、線間耐電圧の低い通信機器では線間の耐電圧の低い部分が破損することになります。耐電圧の低い通信機器を異常電圧による破損から防護するためにSPD(避雷器、保安器)を用い、機器に耐電圧以上の異常電圧が加わらないようにします。SPDをその動作機能により大別すると、次の3種類の形に分類できます。

  1. 絶縁形:絶縁トランスや中和トランス等により異常電圧に対し回路を絶縁し、防護するSPD
  2. 放流形:避雷管、バリスタ等の放流形サージ防護デバイスを使用し、異常電圧に対し回路インピーダンスを下げて、被防護機器に加わる異常電圧を抑制するSPD
  3. 開放形:ヒューズ、ヒートコイル等の回路を遮断、開放する機能のデバイスを使用し、被防護機器の異常電流による焼損を防止するSPD

絶縁形SPDは予想した電圧までの異常電圧に対しては最も確実な防護がなされます。また絶縁形SPDは消耗する部品がないので無保守で長寿命であるが、大型となり比較的高価なので、変電所や山頂無線中継所等非常に過酷な異常電圧が加わる場所に設置される通信機器あるいは、高信頼が要求される通信回線の防護に用いられています。

放流形SPDは小型、廉価であり、適当な防護デバイスの組合せ使用によりかなりの防護性能が得られるので、一般の通信機器の防護に多く使用されています。

開放形SPDは以前は一般的に使用されていたが、電力設備の信頼度の向上、配電線、通信線等の絶縁化により、通信線に長時間異常電圧が加わることがほとんどなくなり、また雷サージに対して開放形はほとんど防護効果がないので、一般の通信機器には開放形SPDがあまり使用されなくなっています。

通信機器の雷対策には、機器に接続しているすべての金属線路(電源線路も含む)に対して、それぞれ適切なSPDを設置して通信機器と共通接地(等電位ボンディング)することが必要となります。通信機器に接続されている一部の金属線路にSPDが設置されていない場合には、そのインターフェイス部から、通信機器内部に電位差が生じて、内部を絶縁破壊して故障してしまうことも考えられます。